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Netflixの『ドリームチーム人事戦略』は日本に合わない

Netflixの『ドリームチーム人事戦略』とは

今ではその名前を知らない人はいない、動画配信サービス会社Netflix(ネットフリックス)
もともとは小さなレンタルビデオ店でしたが、現在では急成長を遂げた動画配信企業として一躍有名になりました。
Netflixの成長の陰には、優秀な人材ばかりを揃えるその人事戦略があります。Netflixはそれを『ドリームチーム』と呼んでいます。

今回はそのドリームチーム人事戦略を紹介し、その理想的で最強と言われる戦略が日本のHRでは機能しない理由を説明します。

Netflixの文化

Netflixには、特定の価値観や行動を重視する独自の社員文化があります。
彼らは特に以下のことに力を入れています。

1.社員自身の意思決定を積極的に促す

Netflixは、曖昧な状況でも賢明な判断ができるかどうか、を重視しています。社員はデータを活用して選択肢を判断し、表面的な問題を解決するだけではなく、なぜそれが起きたのか、潜在的な課題を見つけ出すことが求められます。そして経費に至っても会社の金ではなく、Netflix会員から預かった資金ということを理解し、賢く使う決定権も社員自身にゆだねられています。

2.率直かつ直接的なコミュニケーションをとる

反応する前に、よく聴き、理解しようとする能力を持つことが求められます。Netflixでは、定期的にフィードバックを提供し受け入れる意欲を持っている必要があります。直接的なフィードバックをためらう文化であったり、新入社員であっても、勇気を持ち他者の成長を手助けするために無私である必要があります。

3.優れた人材でチームを構成し続ける

Netflixは、創造的かつ生産的な方法で優れた才能を持つ個人と協力することに重点を置いています。彼らはプロセスよりも人を優先し、それが柔軟性、創造性、成功を可能にします。加えて彼らは「チームプレーのできない秀才はいらない」と明言しています。どんなに優秀でもチーム(会社)のために貢献できない人材は求めていません。

4.ルールをつくらない

Netflixはルールを最小限に抑え、自由と責任の文化を推進します。成長するビジネスには一定のプロセスと構造が必要ですが、彼らは柔軟性とイノベーションを重視する人々第一のアプローチを採用しています。彼らの目標は、人々を管理するのではなく、彼らを鼓舞することでチームがNetflixのために最善の選択をすることで、責任感、説明責任、自己規律が生まれ、優れた仕事ができるようになること。Netflixは自発的に問題を発見し、修正する責任感のある人々のいる企業でありたいと考えています。

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優れた人材だけで創造的な働き方を実現

Netflixの最も重要な価値は、優れた人材と創造的かつ生産的な方法で働くことです。そのため、彼らの基本的な理念は「プロセスよりも人」であり、優れた人材を一緒に集めて夢のチームを作ろうとするというものです。

Netflixのドリームチームメンバーは自分たちを家族ではなく『プロのスポーツチーム』と捉えています。家族の根幹は無償の愛です。一方、ドリームチームで求められるのは、最高のチームメイトになれるよう自分を高めることや、チームのことを深く気にかけることです。そして、自分もいつまでもチームに残れるわけではないという可能性も受け入れなければなりません。

ドリームチームで重視されるのはパフォーマンス。年功序列制や終身雇用制はそこに存在しません。マネージャーは、すべての選手が自分のポジションで素晴らしいプレーをし、他の選手と効果的に連携できるように気を配る必要があります。そうすることでチームは大会で優勝し続けること (Netflixにおいては世界中の人に楽しんでもらうこと) ができるのです。
スポーツチームと違う点は、会社が成長するとともに選手の数が増えていくことです。Netflixは、成長の途上にある選手をしっかりサポートし、将来のスター選手へと育て上げていく、と明言しています。

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日本企業はNetflix人事戦略と合わない

精鋭メンバーばかりを揃え、まさに人事のドリームであるかのようなNetflixの人事戦略ですが、この文化は日本の企業には適合しないでしょう。その理由は以下の通りです。

1.ルール重視 vs. 柔軟性重視

日本の企業は一般的に、明確なルールや規律を重視しています。それは日本企業に高い安全性や品質管理が強く求められているからでしょう。ルールに基づくプロセスや手順を遵守することで、高品質な製品やサービスを提供することが可能となります。一方、Netflixの文化ではルールを避け、柔軟性を重視します。
日本企業の堅いルール体制とNetflixの自由なアプローチは相反する要素であり、両者の人事戦略が一致しづらくなります。

2.コンセンサス重視 vs. 迅速な意思決定

日本企業ではコンセンサス形成が重要視され、意思決定に時間がかかる場合があります。日本の社会や組織文化は、集団主義的な特徴を持っており、複数の人々が参加し、異なる視点や専門知識を持ち寄ることで、よりバランスの取れた判断が可能と考えています。一方、Netflixではスピーディな意思決定を重視しており、迅速な行動が求められます。意思決定プロセスや組織文化が異なるため、これを日本企業に取り入れようとすると上手くいかないでしょう。

3.フィードバック文化の違い

Netflixでは積極的で建設的なフィードバックが日常的に行われる文化があります。それは上司や部下関係なく、双方向に働いています。一方、日本企業ではフィードバックの機会は数か月に一度、少ない企業では一年に一度であったり、フィードバックを控えめに行う傾向があり、上下関係や文化的な要素が影響を与えます。日本企業ではフィードバック=ネガティブに思われがちですが、チーム成功へのいしづえのように捉え、フィードバックをする、受け取るという社風を育てる必要があるでしょう。

4.給与体制の違い

Netflixは優れた人材を集めるために最高水準の給与を提供する方針です。一方、日本企業では給与水準が一律化される傾向があり、経験や成果に応じた個別の報酬体系が限定的です。さらに日本では転職が欧米企業に比べてまだ一般的ではありません。Netflixのドリームチーム戦略は聞こえはいいですが、必要がなくなったら切られる、実質の『使い捨て』のようになる可能性も秘めたもの。終身雇用や年功序列である日本企業では、Netflixの人材採用や留任戦略は機能しにくいでしょう。

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まとめ

いかがでしたか?Netflixのドリームチーム人事戦略は一部の企業において成功しているものの、日本企業の文化や制度との相違があります。これらの要素は、日本企業の伝統的な価値観や慣習とは一致しないため、Netflixの文化は日本の企業には適合しない可能性が高いでしょう。そのため、Netflixの人事戦略をそのまま導入することは難しく、日本企業は自身の独自の文化や制度に合わせた人事戦略を模索する必要があるでしょう。
しかし、フィードバックを日常的に双方向でできる環境や、過度なルールで社員を縛りすぎない、など日本企業でも取り入れることができる部分もあるのではないでしょうか。

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