人材開発

ニュージーランド元首相アーダーン氏に学ぶ「新時代のリーダー」とは

2023年1月19日、国を率いる「余力が底をついた」として、ニュージーランド首相ジャシンダ・アーダーン氏は2月までに辞任すると電撃発表しました。

就任中、モスク銃撃事件、新型コロナウイルスによるパンデミックが起こったり、彼女自身が妊娠を経て、出産するなど一挙一動が話題になった彼女の6年の功績を振り返り、そこから令和に求められる【新時代のリーダー像】を深堀りしていきます。

ジャシンダ・アーダーン氏とは

アーダーン氏はニュージーランドのハミルトンで、警察官の父と学校の給食係として働いていた母の間に生まれました。10代からニュージーランド労働党に入党し、大学卒業後、ヘレン・クラーク氏(第37代ニュージーランド首相)の事務所でインターンを経験。

2017年、37歳3か月で当時、世界最年少の女性首相に就任。その1年後には長女を出産。選挙で選ばれた国のトップが在任中に出産するのは、1990年のパキスタンの故ベナジル・ブット元首相以来、2人目でした。

「平時に国を率いるのと、危機の最中に国を率いるのは別物だ。」

2023年1月19日 退任スピーチより

彼女の1期目は困難続きでした。2019年3月にクライストチャーチのモスクで51名が犠牲になる銃撃事件が発生、2019年12月には21名が死亡したホワイト島での火山噴火。2020年には新型コロナウイルスのパンデミックやその後のリセッション(景気後退)など、さまざまな局面で彼女は国のかじ取りをしてきました。

彼女が見せたリーダーシップと、着目すべき新時代のリーダーの資質を5つにまとめました。

1.危機下における決断力

2020年初頭、新型コロナウイルスのニュースが世界中に広まり始めました。アーダン氏は首相として、大胆かつ果断な行動でこの危機に立ち向かいました。

2020年2月、国内のコロナウイルス感染件数が100件程度だったのにも関わらず、ロックダウンを決定。島国であるニュージーランドの特性を生かし、国境を閉鎖し、入国時に隔離するなどの迅速なウイルス対策を行いました。

最終的には11週間にわたり国土を封鎖し、厳しい政治的決断を下し、ウイルスの猛威を防ぐことができたのです。2020年10月には、マスク着用や社会的距離の取り方などの行動制限がほぼ解除され、国は正常に戻り、世界中が彼女のリーダーシップを賞賛しました。

不測の事態への対応はリーダーである限り必ず求められます。彼女は経済低迷などのリスクを承知で「国民を守る」という選択をどの国より早く行いました。正解が分からないときでも、国民のためにまず動く、その早さが高く評価されました。

2.根底にあるのは優しさ

2019年3月にクライストチャーチのモスクで起きた51名が犠牲になった銃撃事件。このテロ事件により、その日モスクに行っていた多くの罪のない礼拝者が死亡しました。これを受け、アーダーン氏はテロ事件からわずか6日後に軍用半自動小銃を禁止し、「銃買い戻し制度」を通じて6万2000以上の禁止銃器を流通から排除しました。その上で、5月にはフランスのエマニュエル・マクロン大統領とともに、オンラインでのテロリストや暴力的過激派コンテンツの排除を目的とした「クライストチャーチ行動呼びかけ」を主導しました。

遺族を涙ながらに抱きしめる彼女の姿は、多くの国民の感情を動かしました。そして、それだけには留まらず、すぐに次の一手を打つ。
国民に優しく寄り添いつつ国を治めていく、そんな強く優しいリーダーの姿がそこにはありました。

3.オープンなコミュニケーション

新型コロナウイルスの感染者急増を受けてニュージーランドは国家非常事態とロックダウンを宣言したとき。その夜、アーダーン氏はFacebookにあらわれたのです。

「国民が一番目にしているソーシャルネットワークサービスはFacebook」というのを知っていた彼女は、Facebookライブ機能を使い、LIVE配信を実施。自宅待機に備えるための国民からの質問にその場で答えました。

娘を寝かしつけた直後であったと釈明した彼女が緑色のカジュアルなトレーナーを着ていたことも話題になりました。

いつでもコミュニケーションが取れるリーダーであること。部下やチームメンバーが必要な時にコミュニケーションの門戸が開かれているということは、指示を一方的に与えるだけの従来の「ボス型のリーダー」ではなく、新時代のリーダーに求められる大切な要素となりました。

4.自らが宣伝塔に

新型コロナウイルスによるパンデミックが明け、ニュージーランドが再びビジネスに開放されたことを世界に知らしめるため、2022年5月、アーダーン氏は米国訪問を含め、一連の貿易・観光旅行に出発しました。

米国訪問中、アーダーン氏はコメディアンであるスティーブン・コルベア氏のテレビ番組に出演し、ニュージーランドの食品や繊維製品が世界一であるだけでなく、世界にとってベストであることを視聴者に伝えました。

インターネットやスマートフォンの普及で海外メディアや様々なSNSを気軽に見ることができる時代。そんな現代ではPR担当者だけではなく、経営トップが自ら発信する情報が価値を持つようになりました。

そしてそれが拡散されていく新時代、自らが広告塔になるリーダーがこれからも増えるでしょう。

5.働く女性を尊重し理解がある

 

「マルチタスクをこなす女性は、私が初めてではありません。仕事と出産を両立させた最初の女性でもありません – これまでも多くの女性がやってきています。」

2019年 BBCのインタビューにて

アーダーン氏は2018年1月に妊娠を発表し、2018年6月21日に第一子ニーヴちゃんを出産。産後6週間の産休を取得し、2か月後の2018年8月2日に公務に復職した彼女は、世界で初めて在任中に産休を取得した一国のリーダーです。

当時生後数か月のニーヴちゃんにIDカードを作り、国連総会に連れてきたことも大きな話題となりました。

アーダーン氏は、「男女平等は彼女のリストのトップにある」とも明言しており、働く女性のロールモデルであること、同時に働く女性に理解のある社会の創生を目指しています。

ジェンダー・ギャップ指数2022で日本は116位と欧米諸国に大きな後れを取っていますが、女性の社会進出、男女平等は確実に進んでいます。リーダーとして、それを理解し、アシストする、そんな姿勢が求められています。

まとめ

いかがでしたか?

アーダーン氏は、従来の頑固で攻撃的なリーダーではなく、自分が代表する人たちの意見を聞き、モラルと共感を念頭に置いて意思を伝える。そして同時に、時には物議を醸す可能性のある決定的な行動を取ることができるほど強いリーダーです。

共感性、道徳性、開放性を取り入れたアーダーン氏は、新時代のリーダーのあるべき姿を示す例と言えるでしょう。

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