バリューチェーンとサプライチェーンの違いとは
バリューチェーンとサプライチェーンの大きな違いは、バリューチェーンが「価値」に焦点を当てているのに対し、サプライチェーンが「原材料」に着目している点です。
バリューチェーンでは、顧客に提供する際の付加価値や製品の品質向上に重点が置かれます。
一方、サプライチェーンでは、原材料の調達から製品の製造、販売までの流れを効率的に管理し、製品の供給を確保することに焦点が当てられます。
人事組織におけるバリューチェーンとは
それでは、人事組織におけるバリューチェーンとはどのようなものでしょうか?
これは、人材マネジメント活動から始まり、人材マネジメントの成果と目標が続く3つのプロセスです。
人事活動が組織目標にどのように結びつくのかがわかりやすく描かれています。
レベル1の人事組織
レベル1の人事組織では、より良く訓練された従業員は、ビジネスにおいてより多くの利益をもたらすと考え、従業員の学習と能力開発にさらに多くの予算を割り当てます。
レベル2の人事組織
レベル2の人事組織では、予算を増やすだけでなく、投資が成果をもたらすかどうかを確認するためのフォローアップを行います。
従業員の知識定着率を測定し、それがパフォーマンス向上につながるかどうかを確認するのです。
もし望ましい結果が得られない場合は、利益を最適化するためにトレーニングプログラムを変更します。
レベル3の人事組織
レベル3の人事組織では、予算の増額が収益性を向上させるための手段であるか確認します。
この組織では上記のすべてを実行し、KPIがどのような影響を受けるかを検証します。
予算とKPIの間に良い結果が得られない場合は、対策を講じるでしょう。
日本企業の人事組織における代表的なバリューチェーン
日本の大企業であるトヨタは、「モノづくりは人づくり」という理念のもと、創業当時から人材育成を大切にしています。
トヨタは、教育・人材育成の基本的な考え方について下記のように掲げています。
・仕事を通じた自己成長の促進
トヨタは働く者として成長していくことが、従業員にとっては仕事のやりがいであり、そうした自己成長の機会を提供することが会社として従業員に示すことのできる人間性尊重だと考えます。
トヨタでは人材育成を徹底的に実施することを重視し、OJTによる育成に加えて、中長期的な育成の観点から計画的な教育や人事異動を実施しています。
・従業員個々人の能力向上
従業員の能力を最大限活かすことを経営手法とするトヨタでは、従業員の育成は重要な経営投資としてとらえています。
また、従業員一人ひとりの能力を開発することが、少数精鋭集団を実現し、固定人員の適正化に繋がり、経済合理性を高めると考えます。
・中長期的な視点からの人材育成
自動車産業であるトヨタ特有の知識や技術を修得するには、ある程度の時間がかかるため、中長期的視点から、組織全体の底上げをはかり、結果として組織全体でのパフォーマンスを高めることが重要だと考えます。
人事異動は人材育成において重要な手段と考え、特に優秀で意欲の高い従業員には、将来のリーダー候補として中長期的・計画的に育成します。
・OJTの重視
人材育成の基本は業務を通じたOJTであり、部下育成は上司の最も重要な責務の一つと考えます。
日々の業務を通じて、上司が部下に問題解決に向けた分析手法や対策の方向性を講じて、対策を実行していく上でのプロセスを伝授していくことが何よりも効果的だと考えます。
OJTを繰り返すことで、上司は部下の実力、強み・弱みを具体的に把握でき、それに基づいた育成が可能となります。
トヨタは従業員に対して自己成長の機会を提供し、仕事を通じた成長を重視しています。
これにより、従業員はより高いレベルのスキルと知識を習得し、業務においてより高いパフォーマンスを発揮できます。
人事組織におけるバリューチェーンが確立されていることで、生産性と品質の向上に繋がっていると言えるでしょう。
人事組織におけるバリューチェーンの活用法
先述のように、人事組織におけるバリューチェーンは3つのプロセスになっています。
トヨタの人材育成の考え方は、従業員の自己成長の促進から始まり、従業員一人ひとりの能力開発・育成、結果的な組織全体のパフォーマンス向上と人事組織におけるバリューチェーンが確立されています。
従業員がスキルや知識を向上させるための機会を提供するために、十分な予算を割り当て、それが従業員のパフォーマンスの向上につながるかどうかを評価し有効性を確認することです。
トレーニングや教育プログラムの有効性を定期的に評価し、従業員とビジネスの両方にとってのメリットを最大化するために、必要に応じて調整します。
まとめ
従業員のスキルや知識向上のため、十分な予算を割り当て、それに対する有効性・効率性を評価し、組織全体の目標達成につながるか検証する。
組織全体の利益向上のため、こうした人事組織におけるバリューチェーンを活用してみてもいいかもしれません。
人材マネジメントにおいて、少しでもこの記事がお役に立てば幸いです。
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