人事評価は88%が「時間の無駄」という衝撃の結果
人事評価は、多くの企業にとって、人材育成や組織活性化に欠かせない取り組みです。
しかしその一方で、人事評価は時間と労力がかかり、効果が薄いという声も多く聞かれます。アドビシステムズが行った「Performance Reviews Get a Failing Grade(パフォーマンスレビューに不合格判定)」の調査によると、マネージャーの88%と従業員72%とは、人事評価の準備は時間の無駄だと考えています。
この調査によると、評価者は、従業員1人あたり、人事評価の準備に17時間かかるそうです。従業員や評価者の2/3の方が、時代遅れの評価制度であると考えています。
この結果から、従業員や評価者は、人事評価について非生産的で時間の無駄だと考えていることが分かります。
人事評価制度が時間の無駄な4つの理由
ここでは、人事評価が時間の無駄だといえる問題・理由を4つ深掘りしてみましょう。
①膨大な時間と労力がかかる
評価項目の設定、面談、評価結果のフィードバックなど、人事評価には多くの時間と労力がかかる点です。先ほど紹介した調査にある通り、従業員1人あたり、人事評価の準備に17時間かかっているというデータがあります。
特に、中小企業では限られた人材で人事評価を運営しなければいけないため、負担が大きくなります。
これだけ時間や労力を費やしたとして、はたして企業にとって本当に利益を得ているのでしょうか?それが組織の成果や従業員の成長につながっていなければ、コストがかかるだけで何の利益にもならず無駄に終わってしまいます。
②曖昧な評価基準である
評価項目が曖昧だと、評価者によって評価基準が異なり、不公平な評価が生じる可能性があります。
よくある評価制度では、Aランク・Bランク・Cランクというように、5~10段階評価など、厳格な評価システムを作ります。一見平等な評価制度に見えますが、評価者の主観や思い込み、先入観などで大きなばらつきが出る可能性があるのです。
また、評価結果が数値化しづらい経理などの職業の場合、評価を明確に行うのが難しいという課題も考えられるでしょう。
近年では、仕事の成果をランク付けしない「ノーレイティング」という人事制度を導入している企業もあります。詳しくは、下記の記事をお読みください。
③形式的に評価している
単に評価作業をこなすだけで、人材育成や組織活性化に活かせていないことも課題の1つです。
評価結果がフィードバックや目標設定などに活用されなければ、人材育成や組織活性化につながらず、評価制度そのものの存在意義が失われ、時間の無駄に終わってしまいます。
④長期間の評価により実態と乖離する
繰り返しになりますが、 従来型の評価制度は、形だけが残り時代遅れだといえるでしょう。
従来型の人事評価制度は、半年から1年といった長期間を評価期間として設定されていますが、実際の業務はもっと短期間で行われるものではありませんか?このような状況下では、長期間の評価制度では業績や目標が常に変化し、過去の評価が意味をなさなくなる可能性が高くなります。
さらに、長期間が経過すると、上司や従業員が過去の目標や業績を正確に覚えているかどうか疑問が残ります。そのため、評価やフィードバックが不正確であったり、曖昧な記憶に基づいて評価が行われたりする可能性が高くなり、不満やストレスが募りやる気が低下します。
人事評価で優秀な人材が辞めることも
従来の人事評価は時間や労力がかかりますが、それだけではありません。人事評価制度を改善しなければ、組織全体の生産性が下がり、優秀な人材が流出する可能性があるのです。
ITmediaビジネスONLINEが現職を持つ20~50代の社会人男女758人を対象に調査したアンケートでは、下記のような結果になっています。
上記のアンケートによると、評価制度によって転職を考えた経験がある、どちらかといえばあるなど「ある」と答えた方が71.8%。また、実際に転職をした方は48.9%です。
部下が思う評価と上司から伝えられた評価に乖離があり「思っていたのと違う。この会社は自分に合わないのかも……」と考えられてしまうのことが原因の1つです。
特に、優秀な人材であるほど、優秀な人材ほど公平な評価を求めて離職する傾向が見られます。
優秀な人材の流出は、企業にとって大きな損失です。生産性の低下に加え、採用活動に伴うコストや時間、新入社員の育成コストなどが発生し、企業の生産性や競争力を大きく損なう恐れがあります。
今の人事評価制度を見直しませんか?
時間と労力の無駄と感じることもある人事評価制度ですが、適切な制度であれば、人材育成、定着率向上、ひいては業績向上にも貢献できます。
今こそ、現状の課題を把握し、時代のニーズに合う人事評価制度へと見直す好機と言えるでしょう。
例えば、以下のような新しい人事評価制度があります。
①360度評価
360度評価とは、上司だけでなく、同僚や部下からも評価を受ける人事制度のことです。
従来の人事評価制度では、上司による評価のみなので、上司の主観によって評価が左右されてしまう可能性があるでしょう。しかし、360度評価では、周囲からの様々な視点からの評価を得られるため、より納得のいくフィードバックを受けることが可能です。
業務への貢献度や組織への帰属意識が高まるとともに、人材育成や指導の方向性も明確になります。
360度評価について詳しく知りたい方は、下記の記事もお読みください。
②目標管理制度(MBO)
目標管理制度(MBO) とは、個人やチームで設定した目標に対する達成率を評価する方法です。
従来の上司による評価と異なり、目標達成度を客観的な指標や数値などで測定するため、評価者の主観や先入観が入り込みにくいというメリットがあります。従業員自身が目標を設定するため、納得感が高く、自主性を維持しやすい点も魅力です。
ただし、評価につながりにくい業務を避けたり、簡単な目標を設定したりしてしまうデメリットもあります。目標を上司と共有し、進捗を把握していくことが重要です。
③コンピテンシー評価
コンピテンシー評価とは、仕事で高いパフォーマンスを発揮している人に共通する行動特性である「コンピテンシー」を評価基準とする人事評価です。自社で高い成果を出している従業員の行動特性をモデルに、基準を設定して評価を行います。
「企業にとって理想的な人物像」などモデルとなる従業員を分析する必要があるため、目標設定までに時間がかかりますが、従業員一人ひとりがどのように業務に貢献したのか理解しやすく、評価内容に不満を持たれにくいのが特徴です。また、評価を上げるためにどんな行動をすればいいのかイメージしやすく、効率的に人材育成が可能になります。
このような新しい評価制度を導入することで、従業員のモチベーション向上やスキルアップを促進し、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
人事評価制度を変更することは、時間がかかるかもしれませんが、優秀な人材や生産性や競争力の低下を防ぐためにも、見直しを検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
人事評価制度は、企業にとって重要な取り組みですが、従来のやり方や評価制度では時間や労力の無駄が多いという課題が浮き彫りになっています。
適切な制度を準備し運用することで、人材育成や会社への定着率、業績向上にもつながるでしょう。
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