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パワハラ防止法の対策できてる?職場での認識と対処法の基本

2020年の厚生労働省調査によると、過去3年で31.4%の人がパワーハラスメントを受けたことがあると答えました。

引用:厚生労働省:令和2年度厚生労働省委託事業職場のハラスメントに関する実態調査主要点

これが大きな社会問題として注目され、2022年4月1日からは「労働施策総合推進法」に基づき、事業主は職場でのパワーハラスメント予防対策を行うことが義務化されました。

法律では、明確な定義と対策が示され、「パワーハラスメント防止措置」としてまとめられています。

職場におけるパワーハラスメントとは

職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。

典型的なパワハラの6類型

職場におけるパワーハラスメントの状況は多様ですが、代表的な言動の類型として、厚生労働省が示している6つの行動パターンを紹介します。

しかし、以下の6つの基準に合致しない場合でも、実際にはパワーハラスメントと認定されることがあるため、これらの基準を参考にしつつ、具体的なケースでは当事者の話を聞いて総合的に判断する必要があります。

 

1.身体的な攻撃
パワハラの中でも最もわかりやすい、殴る・蹴る・物を投げるなどの暴力的行為

2.精神的な攻撃
相手を侮辱し、人格を否定するような言葉の暴力

3.人間関係からの切り離し
不合理な理由で業務から外して周囲から孤立させ、仲間外れのような状態にすること

4.過大な要求
明らかに遂行が困難であろう仕事や業務に関係のないことを強制する行為

5.過小な要求
本人の能力を著しく下回る仕事しか与えないことや仕事を全く与えないこと

6.個への侵害
家族や恋人などプライベートに必要以上に踏み込んだり、信仰する宗教など業務とは無関係なことに執拗に触れること

 

放置によるリスク

「ハラスメント」が横行してしまうと、企業にはどんなリスクが生じるでしょうか。

1.法的責任

企業が「ハラスメント」を行動した場合、その企業は法的な責任を負う可能性があります。

つまり、不法な行為や契約違反などの法律的な責任が生じることがあると認識してください。もし「ハラスメント」が確認されれば、企業は被害者に対して精神的な苦痛を補償する必要があります。

さらに、訴訟などの民事紛争に発展すると、企業の評判や信用にも大きな悪影響が及び、会社の信頼性が低下する可能性があるでしょう。

2.離職率の増加

ハラスメントが問題となる職場では、従業員のやる気が減少し、結果として離職率が上昇する可能性があります。

優秀な人材が会社を去ることが予想されるでしょう。多くの社員が転職を考える状況になれば、企業は新しい人材を採用する必要が出てくるため、採用コストや生産性にも悪影響を及ぼすことが考えられます。

ハラスメント対応

実際にハラスメントが起こってしまった場合、企業に求められることは何でしょうか。

1つめは、「被害者にメンタルヘルス不調が認められる場合は治療を優先すること」

ハラスメントが報告されると事実確認調査が行われます。この事実確認調査を心のダメージが大きい時期に行うのは、被害者にとって負担です。

また、精神的に不安定だったり、被害妄想が出ていたりする時期にとられた調書は信用性が低いと見なされるケースがあり、被害者にとって不利益になります。

メンタル不調が見られる場合は治療を優先し、体調が回復してから被害者への聞き取りを行うようにしましょう。

2つ目は「ハラスメントの行為者と被害者を物理的に離すこと」

ハラスメント被害者の多くに、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に関連した症状が見られることがわかっています。

ハラスメント被害が発覚した場合は一刻も早く、行為者と被害者を引き離すことが大原則です。指揮命令系統を変更し、事実確認調査が終わるまで行為者を自宅待機とすることをお勧めします。

3つ目は、ハラスメントが認定されたら「行為者を異動・処分すること」

行為者は管理職であることが多く、「行為者の代わりはいない」などと言って、被害者を異動させてしまうことがよくあります。

しかし、これは「この会社では、管理職はハラスメントで処分されない」「この会社はハラスメント対策に本気ではない」という強烈なメッセージを発信していることと同じです。

「行為者」を異動させることで、ハラスメント防止に対する組織の本気度を示すことができ、従業員に落胆や絶望感が広がるのを防ぐことができます。

4つ目は、「管理職に対して、いつ録音・録画されても良い状態で指導するように周知すること」

録音・録画・メールは、ハラスメントがあったかどうかを判定する最強の証拠です。

逆に、ハラスメントをしていなければ、やっていないことを明確に証明するツールでもあるのです。これは管理職自身の身を守ることにもつながります。

指示事項は口頭ではなくメールで行うなど、普段から記録を残す習慣をつけるといいでしょう。

パワハラ防止法における企業の義務

社内の方針をはっきりと示し、理解を広める

まず第一に、職場内でのパワーハラスメント行為を行ってはいけないというルールと、それに対する対策方針を明確にし、全社員に知らせることが求められます。

また、パワーハラスメントを行った人には厳格な処置を行うことを定め、その具体的な取り組み内容を文書で示し、研修や社内情報、就業規則などを通じて、パワーハラスメントに関する情報を広めてください。

適切に対応するための仕組みを整える

その次に、社内でパワーハラスメントに関する相談ができる場所を用意する必要があります。

ここでは、社員が自由に相談できるような仕組みにしましょう。相談があった場合、専門の担当者が雇用管理上必要な対策を取れるようにするための体制を整えてください。

相談者が不公平な扱いを受けないようにする

第三に、パワーハラスメントの相談をした人に対して、そのことを理由に解雇や異動、自宅待機、減給などの不利益な措置を取らないことが求められます。

また、パワーハラスメントの関与者(相談者や行為者)のプライバシーも尊重し、適切な配慮をすることが重要です。

パワハラ事案への問題に速やかにかつ適切に対処する

最後に、パワーハラスメントの報告があった場合、速やかに正確な事実を確認し、被害者への配慮と行為者への対処を行うことが必要です。

さらに、今後の再発を防ぐための対策を講じることも求められています。

まとめ

職場でのパワーハラスメントは、特殊なケースだと思う人もいますが、行為者自身は適切な業務指示や通常の質問として考えている場合でも、受け取る側がそれを「過度な要求」や「個人的な侵害」と感じることがあります。

コミュニケーション不足による認識のずれや、パワーハラスメントの理解に欠けることが、意図せずパワーハラスメントを引き起こす原因となることがあり、それは特別なことではありません。

企業は、正確な情報を広めることやコミュニケーションを活性化させることなど、予防策を充実させる必要があります

また、もしパワーハラスメントが発生した場合には、適切な対処方法についての準備も必要です。

企業はパワーハラスメントのリスクを最小限に抑え、従業員が安心して働ける環境を築いていくことに取り組むことが求められています。

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