マネジメント

給与は下げず、週休3日制にする方法を考えてみた(ケーススタディあり)

「同じ給料をもらえるなら1日でも多く休みたい」これは誰もが持つ願望でしょう。でもそんなこと実現できるはずがない。この記事を見るまでは、私もそう思っていました。

こちらの記事、要約すると

・アルサムス・トラベルは、英国の旅行会社
・2022年に従業員の週4日勤務を導入し、給与を減らすことなく働き方を改革
・週4日制の効果は素晴らしく、従業員のウェルビーイングが向上、病欠が減少
・スタッフの生産性が向上し、売上と利益も増加
・採用も優秀なスタッフの採用が容易になった

というもの。まるで夢物語を見ているようです。でもこれは海外での話です。日本はペーパーワークが大好き、長時間働くことが美徳とされている風潮がまだあるし、日本では無理でしょ…と思っていたところに、以下の記事を発見してしまいました。

日本企業で、鳥取です!(人口が一番少ないとか、のんびりとした勝手なイメージが…すみません)

もしかしたら、私たちが知らないだけで世間の会社は週休3日が可能なのかもしれない、と思い立ち、今回はそれを実現する方法を考えてみました。

企業は「無理」従業員は「希望」

2020年の東京都産業労働局が行った調査によると、企業は「週休3日制」を「導入する考えはない」制度として、を60.5%と最も多く回答しています。

引用:令和2年度 中小企業労働条件等実態調査 「働き方改革に関する実態調査」

対して、従業員の54%は「今後導入してほしい」と回答しています。(この調査では給与はそのままでという条件でヒアリングしています)

引用:令和2年度 中小企業労働条件等実態調査 「働き方改革に関する実態調査」

グラフを見てお分かりの通り、コロナの影響もあり広まった在宅勤務と比較して、週休3日制が導入されている企業はほとんどありません。しかし半数以上の従業員が望んでいる働き方です。

週休3日制は主に3パターン

リサーチすると、一口に週休3日制といっても主に3種類に分類できることが分かりました。株式会社ナレッジソサエティの調査を参考に、そのパターンと導入企業を以下のようにまとめてみました。

①休日を増、給与が減パターン(総労働時間は減少)

これは「休みを取るか、給与を取るか」という方法。導入企業にはみずほフィナンシャルグループがあり、希望する社員が週休3日や4日で働ける制度を導入しています。給与は週休3日だと従来の8割、週休4日の場合には6割まで減るようです。

同様に日本IBMの従業員は週3日勤務、4日勤務、5日勤務から働き方を選択でき、それぞれフルタイムに比較して給与は3割減・2割減などとなっています。

②1日の労働時間増、給与は維持パターン(総労働時間は変化なし)

これは「1日の勤務時間を長くする代わりに、休日を増やす」という方法。導入企業で代表的なのはユニクロで「1日10時間(従来は8時間)×ただし土日を含む週4日の勤務」で週休2日制と同様の給与を支給しています。

高い離職率の改善と業界全体で深刻な人手不足の解消が狙いのようです。

③休日は増、給与は維持パターン(総労働時間は減少)

これが多くの従業員が求めているであろう「給料・労働時間は同じまま、休日が増える」という理想のパターンです。沖縄県内で訪問看護ステーション「クラセル」を4店舗展開するベストライフは土日の勤務が条件ですが、勤務時間は午前8時半~午後5時半の日勤で週4日間の計32時間。週休2日制と比べて8時間少ない一方で、看護師の初任給は27万円からで、2日制と給料や福利厚生面も待遇に差はない週休3日制を導入しているそうです。

今回はこの記事では③の「労働時間は同じまま休日が増える」を実現させるにはどうすればいいのかをケーススタディを見つつ考えてみようと思います。

給与同じで週休3日制を実現する方法

①IT化+DX化を進める

鳥取の不動産会社㈱ウチダックは「社員約50人のスケジュールをホワイトボードで管理」「厚さ20センチの書類ファイルがデスクに積まれている」という従来の状態を大幅に改革、PCも全員分無かったところを1人1台付与、クラウドツールを導入しDX化したことが週休3日制導入に大きな役割を果たしました。

紙ベースだったものをDX化することで効率の向上、経費の削減、分析性のアップ・リモートでのアクセスが可能になります。

②属人化の解消

「〇〇さんでないとできない」という業務があれば担当者が休めない状況が蔓延している状態。栃木サッカークラブ(栃木SC)では限られた予算の都合上、フロントスタッフは非常に少ない人数で業務をやり繰りしており、個々の業務が属人化していました。

そこでナレッジ共有ツールを導入し「誰でもすぐに必要な情報を把握できる」状況を作り出しまた。
業務フローやナレッジを可視化することで、リスク軽減・チームワークの強化・継続的な成長などが見込まれます。

③出勤日を人手が足りない日に固定する

「月~金で5日働くより、土日出勤はあるけれど平日3日が休める」という状況にするだけでも、週休3日制を希望する従業員は多くいるのです。

例えば先に述べたユニクロやベストライフは人手不足になりがちな土日に出勤を条件に週休3日制を導入することを実現。従来『土日祝日手当』として支払っていた人件費を週休3日制導入に充てたことになります。

④複数人が複数業務ができるようスキルアップ

属人化の解消にもつながるところがありますが、リクルートワークス研究所によるとフランスの資材リサイクル会社Ypremaは、例えば、人事部では通常、給料計算担当の1名、人事・総務担当が1名、労務関係1名の3人体制であったところ、1名が休みの時は他の2名が仕事を代替できるように、個々のスキルを向上させました。

社内では上昇機運が広まり、世代間のスキル伝達においても大きな効果がみられたといいます。

週休3日制のメリットとデメリット

ここまで週休3日制をいかに実現させるかをケーススタディとともに見てきたが、そもそもの週休3日制メリットとデメリットをおさらいしておきましょう。

メリット

ワークライフバランスの向上
生産性向上
従業員の満足度向上
人材確保や離職防止
環境への影響軽減
純利益の増加

デメリット

労働観削減による生産性低下の懸念
業務の調整と運用の困難さ
一部サービス業への適用難易度
コミュニケーションの課題
労働負担の増加

このように週休3日制にはメリットも多いですが、導入におけるデメリットもあることを認識しておくべきですね。

その週休3日制待った!

週休3日制を進める動きが徐々に増える中、㈱船井総研 宮花氏安易に休日を増やすのは危険だと以下のように述べています。

採用難、従業員の労働時間削減による働きやすさの観点から、会社規定の年間休日数を増やす企業が増えているが、年間休日を増やすことは労働者の時間単価アップに繋がる可能性が高く、経営者としては時間外手当などの膨らみも考慮しなければいけないというのが理由にあげられる。
(引用:【働き方改革の注意点】「年間休日数」を増やす前に「生産性」向上

週休3日制 検討チェックリスト

そもそも従業員に求められているからと言ってあなたの会社が週休3日制に合っているかを知らなくてはなりません。米国のソフトウェア開発会社Asanaは検討段階で以下のようなチェックが必要だと述べています。

✔ビジネスモデルと業界を考慮する

ビジネスモデルがカスタマーサポートのような機能を中心としたものであったり、社外の顧客との取引が主な業界であったりする場合、週休3日制の導入は現実的ではない、あるいは採算が合わない可能性がある

この働き方改革があなたの会社や顧客にどのような影響を与えるかを考え、現実的に実施できるものかどうかを判断すべきである。

✔採算が取れるかどうかを判断する

会社は従業員で成り立っているが、利益が出なければ存続はできない。週休3日制にしたところで採算が取れるかどうかをシミュレーションすることが必要。

ビジネスやオペレーションなどのチームと協力し、勤務体系を変更することでビジネスの収益性にどのような影響があるかを判断する必要がある。

✔カバー体制を確保できるかどうか

働き方を変更する際、トラブルが起きたときのカバー体制を考えておくことは非常に重要で、カスタマーサービスやIT部門など、週休3日制勤務で苦労しそうな部門と協力して、仮のバックアッププランを描いてみよう。

そうすることで、移行した場合に会社が直面する可能性のある課題と、その対策について理解を深めることができる。

✔チームと話し合う

週休3日制への移行は、チームに大きな影響を与える。従業員はその可能性をどこまで予測できているか?

また、新しい働き方が彼らのキャリア成長や仕事量にどのような影響を与えるかについて不安を感じてはいないか?チームと話し合うことで、新しい働き方が適切かどうかを判断することができる。

✔週休3日制だけが選択肢ではないと覚えておく

もしあなたの会社が週休3日制に合わなくても、大丈夫。従業員の福利厚生を優先させるためにできることは他にもたくさんあることを忘れない。

例えば、9/80スケジュールは、隔週で休日を与える代わりに、2週間の労働時間を少し増やすというもので、労働時間を減らすことなく、休日を増やすことができる。また、金曜日をフレックスタイム制にしたりすることで、オフィス稼働日を1日も減らすことなく、従業員にゆとりを与えることもできるでしょう。

ハイブリッド・ワーク・モデルのような柔軟なワークスケジュールを導入することで、短時間勤務を導入せずにワークライフバランスを向上させることも十分可能。

週休3日制がうまくいかない場合は、従業員のワークライフバランスを優先させるために、他の選択肢を考えましょう。

まとめ

いかがでしたか?『給料そのままで週休3日制』導入を目指して記事を書いてみましたが、従業員の希望や人材確保のような目先の利益だけを見越して制度導入を目指すのではなく、業務効率化を進めたら週休3日も実現した、となるのが自然なのかもしれません。ですが『給料そのまま週休3日制』という目標を掲げることによって従業員の士気が上がり、生産性がアップすることはほぼ間違いないでしょう。

近年では期間限定で試験的に週休3日制を導入している企業が増えています。テストしてみて、問題点や利点を確認しながら本格導入を進めるといいでしょう。

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