ウェルビーイングの意味と定義
「ウェルビーイング(well-being)」は、健康、幸福、福祉などに直訳されます。
これには、自分の気分、士気、体力、自律性、成功などについてどう感じるかという主観的なものと、健康、教育、安全、人生の見通しなどのより客観的な尺度が含まれます。
従業員について考えるとき、人事リーダーは、精神的、肉体的、経済的、社会的など、さまざまなタイプのウェルビーイングについて考えることが多いです。
ウェルビーイングの日本での考え方
日本ではどのようにとらえられているでしょうか。
以下は厚生労働省の定義です。
「ウェル・ビーイング」とは、個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念。
引用:厚生労働省「雇用政策研究会報告書概要(案)」
注目されている政治的・社会的背景
働き方改革
日本は高度経済成長期の後、少子高齢化とブラック企業の問題に直面し、働き方の多様化が進んでいます。
政府は一億総活躍社会の実現を目指し、2019年から働き方改革関連法を実施しました。
この法律は、個々の労働者が多様な働き方を選択し、将来に向けて希望を抱けるようにすることを目指しています。
長時間労働の是正、公正な待遇の提供、高齢者や女性の雇用促進などが主な目標とされています。
ただし、ウェルビーイングという言葉は法案には含まれていません。
新型コロナウイルス感染拡大
ウェルビーイングの視点が重要視される背景に、コロナ禍による価値観の変化があります。
リモートワークの普及により、自分らしい働き方を模索する人が増加しましたが、同時にコミュニケーション不足やメンタルヘルスの問題も指摘されています。
このような状況から、働き方改革や健康経営におけるウェルビーイングへの関心が高まっているのです。
社会の多様化
2021年の外国人労働者数は172.7万人であり、これは2008年の48.6万人から100万人以上増加していることがわかります。
厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ【本文】 (令和3年10月末現在)
外国人との接触が増えるにつれ、円滑なコミュニケーションとお互いの習慣や考え方の違いを認め合うことが必要です。
グローバルな社会の進展により、ウェルビーイングは日本国内でも重要な考え方となっています。
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ウェルビーイングと経営
2020 Health and Well-Being At Work Survey(チャータード・インスティテュート・オブ・パーソネル・アンド・ディベロップメントによる調査)では、従業員のウェルビーイングに投資することのメリットとして、次の3つが挙げられています。
1.従業員の士気とエンゲージメントの向上
2.より健康的で包括的な企業文化
3.病気欠勤の減少
これらのうち1つでも当てはまる結果が得られれば、雇用主が積極的にウェルビーイングに取り組むことにつながるでしょう。
また、3つすべてを考慮することで、非常に説得力のあるビジネスケースとなり得ます。
経営にもたらすメリット
ウェルビーイングを重視する組織が生産性向上と従業員の満足度向上を期待できる理由は、多岐にわたります。
従業員の健康や幸福は、組織にとって重要な資源であり、以下のようなメリットをもたらします。
まず第一に、従業員の健康と幸福が組織の生産性向上に寄与します。
健康で幸福な従業員は、仕事に集中しやすくなり、ストレスや体調の悪さによる生産性の低下を抑えることができます。
その結果、業務の質と量が向上し、組織全体の生産性が高まります。
第二に、ウェルビーイングの重視は従業員のクリエイティビティと創造性を促進します。
健康な従業員はより創造的なアイデアを生み出す傾向があり、組織のイノベーション力や競争力を高める要因となります。
また、ウェルビーイング対策によって従業員の満足度とロイヤルティが向上します。
健康や働く環境への配慮は従業員に対する働きやすい環境を提供し、結果として従業員の満足度が高まり、長期的な離職率が低下します。
さらに、ウェルビーイングを重視する組織は、優れた人材の獲得と定着にも有利です。
健康やワーク・ライフ・バランスを重視する企業は、有望な人材を引き寄せやすく、また魅力的な職場環境を提供するために人材の定着率が高まります。
健康プログラムの提供や予防措置の強化は、従業員の健康を維持するうえで効果的であり、結果として企業の健康コストを削減できます。
さらに、ウェルビーイングが強調される企業は、社会的に責任ある組織として認識される傾向があります。
従業員への配慮や社会的な健康増進活動により、企業のイメージが向上し、社会的な信頼性が高まります。
これらの要素は、組織の成功に不可欠であるため、経営者がウェルビーイングを重視することは、経営にとって有益な戦略と言えます。
従業員の健康と幸福に焦点を当てることで、生産性と効率の向上、人材の確保、企業のイメージ向上など、多くのメリットを享受できるでしょう。
ウェルビーイングの取り組み
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持続的なチームの在り方を検討する上で、「企業」と「働く個人」の両側面から、3つの要素「仲間」「時間」「空間」(三間)の設計と、それぞれに「余白」を設けることが大切だと考えました(三間+余白)。
「企業」からは目的や価値観の発信、多様な仲間との発信をすることで「仲間をつなぐ」、仕事やチームの節目、計画的休息の推奨で「時間を区切る」、場所や協業ツールの提供により「空間を整える」ことを行っています。
「働く個人」の側面からは、人として繋がる、時間を操る、仕事場を演出することへの工夫を問いかけています。
引用:Rakuten ニューノーマル時代に向けて、 コレクティブ・ウェルビーイングを考えよう
まとめ
新型コロナウイルス感染症の拡大により、私たちは急に働き方を変えなければならない状況に直面しました。
時差勤務や在宅勤務など、「時間」や「場所」に拘束されない柔軟な働き方を経験することで、今後は働き方の多様化が加速すると予想されます。
ウェルビーイングを導入することは、生産性と競争力を高め、人材の定着率が高まることにより離職率の低下が期待できます。
企業の健康コストが削減でき、何よりも企業イメージが向上し、社会的信頼が高まります。
企業はウェルビーイングに積極的に取り組むべきであることは間違いないでしょう。
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