オフィスビルの建設は煩雑なものです。
同時に、企業文化を育むこともまた多くの要素を含む構成要素が多い課題です。
職場で、解決が難しい煩雑な課題やプロセスと、解決可能ながら構成要素が多い課題を区別できないと、時間やコストがかかりすぎてしまい、従業員のやる気が減退し、最終的な成果が危険にさらされることになります。
オフィスビルの建設は、熟練した建築家が最終的な仕上がりを明確に説明できるほど、煩雑なプロセスです(構成要素が多いことはまれなケースです)。
設計作業は、基礎、外壁、換気システムなどの要素に分けることができます。
これらの要素は、予測可能な方法で相互に影響し合い、それぞれを体系的に取り扱うことができます。
オフィスの形態は多岐にわたりますが、どのような材料と労働力が必要かを把握するために、既知の手法を適用することが可能です。
特に斬新なデザインの場合、建設は挑戦的に感じることもありますが、正しい知識を持てば、そのプロセスを円滑に進めることができます。
それができれば、2つ目のオフィスビルを建設することもスムーズに行えるでしょう。
人と文化は建物と同じようには扱えない(同じではない)
企業文化は、煩雑な課題ではなく、構成要素が多い課題に直面しています。
何が望ましい状態かを説明することはできますが、例えばインクルージョン(包括)やイノベーション(革新や刷新)のような、明確に定義できる結果が容易に得られるわけではありません。
そのため、成功を保証するステップもありません。
技術やマネジメントの専門知識が、はっきりとした道筋を提供するわけではないのです。
このような複雑なシステム内では、部品が移動し、相互作用します。
優れたアイデアとその実現との間には、制御できないさまざまな要素が存在します。Aを左に動かすと、Bが右や上に動くかもしれません。
相互作用は単純ではなく、新たなものが生まれることもあり、関係性がはっきりしないこともあります。
コンクリートが、意図や目的を持つわけではないのです。
構成要素が多いシステムをコントロールしようとするのはやめよう
最初の構成要素が多いシステムは自然環境です。
第2のシステムは社会であり、第3が経済のシステムです。
企業、慈善団体、政府などの枠組みに属する人々は、第4のシステムとなります。
マネージャーやリーダーが構成要素が多いシステムを完全にコントロールすることはできません。
物質の一部であるレンガや他の人工物は、新しい場所に移動されても不安や抵抗を感じることはありません。
コンクリートは、意味のある目的を求める意思を持っていません。
人間関係の悪化や健康状態の悪化によって基盤が崩れることはないです。
偏見や気まぐれによって重力が予期せぬ方向に作用することもありません。
私たちは社会的な世界の一部です。
距離を置いて、構成要素が多い問題をただ「管理」することはできません。
価値観や信念、感情や態度、恐れや嗜好(しこう)の変化を理解せずに、組織を正しく理解し育てることはできないのです。
従来のマネージメントスタイルは機能しない
これは当たり前のことのように思えるかもしれませんが、典型的な管理方法(私が以前の記事で概説したように、文化を変えることはできない。だからやめてください!)は科学的管理の原則に基づいています。
そこでは、包括的な目的は「強制」であり、支配力を行使することです。
私たちは目標やマイルストーンを設定し、ガントチャートを公開してタスクを整理します。
しかし、構成要素が多い世界では、スプレッドシートや棒グラフは単純化された誤解を生み出す虚像となります。
これらは私たちを誤った限定的な視点に縛り付け、自分たちが実際に持っている以上のコントロールができるかのような錯覚を生むことになるのです。
煩雑な問題は、苦労して得た技術や経験を活かすことで満足感を得られます。
同様に、構成要素が多い社会システムを育てるよりも、煩雑な問題を解決する方が簡単です。私たちの偏見は、世界は複雑であり、とても管理しやすいものであると考えることです。
マネージメントのルールブックに挑戦する
皮肉なことに、コントロールしようとすればするほど、自分自身を縛り付けることになり、望む結果を手にするチャンスは少なくなります。
構成要素が多いからこそ、現実を確認する必要があるのです。
プロジェクトマネージメントのツールは、わずかなひと手間を加えるだけで、有益なガイドとなります。
それでも、マネージャーは、直面する構成要素の多さを完全にコントロールしたり、把握したりすることは難しいと受け入れることが大切です。
よりオープンで、柔軟で(そして確信に満ちた)アプローチが推奨されます。
ここでは、従来のマネジメントの常識に挑戦する5つのアイデアを紹介しましょう。
1.「達成」すべき目標がない
私たちは理想の未来について話さなければなりませんが、構成要素が多いシステムの中では、意味のある目標を達成することは難しいです。
採用方針は指針となりますが、それだけではインクルージョンの文化を表すものとは言えません。
目標や成果物を追い求めるのではなく、より広く、常に進化し続ける視点や最終的な目標にエネルギーと注意を向けるべきです。
2.意味のある成果を測定するのは難しい
科学的管理の父と呼ばれるフレデリック・ウィンスロー・テイラーは、業績をストップウォッチで測定しました。
現代でいうところの、スプレッドシートやチャート、パーセンテージです。
目標と同様、これらは進化の手がかりになるかもしれませんが、進化そのものではありません。
何かを測ったり、あまり意味のない数字を追いかけることには注意しましょう。
3.形式的な権威は重荷
私たちは年功序列や役割、経験に基づく権威を行使することを好みますが、問題はそれによって、管理職がコントロールできないものを「管理」し、同時に他の人々のモチベーションを損なうことに、つながっています。
進化は全員の仕事であり、それぞれは全体を相互関連する一部なのです。
管理職の役割は、ドアを開けて人々を歓迎することにあります。
4.マネージメントの締め付けを緩める
矛盾したことやわからない部分は、常に相互に関連しあうシステムの中で起こります。
その予測はほとんど不可能です。
目標を達成したり状況を管理したりするためには、あらゆる面を厳しく管理するのではなく、慎重なサポートが効果的です。
5.人を第一に考える
複雑な組織には未知の要素があり、これらはすべて他の複雑な環境の中に存在します。
何から始めればいいのか迷うこともあるでしょう。
しかし、エネルギーを持っているのは人間であり、目標や計画、タスクは人々から生まれるものです。
構成要素の多さを意識する
煩雑な問題だけでなく、構成要素が多いシステムを考慮したリーダーシップが、組織全体やそこで働く個人の成長を促進します。
この記事はMarble BrookのQuentin Millington氏によってHRZoneに書かれたものの翻訳転載です。
配信元または著者の許可を得て配信しています。