そもそも1on1とは?目的と本来の役割
1on1の基本定義と導入の背景
1on1(ワン・オン・ワン)とは、上司と部下が定期的に1対1で行う対話です。従来の評価面談や業務報告とは異なり、1on1の主な目的は、部下の成長支援や信頼関係の構築です。
急速な環境変化や価値観の多様化を背景に、特に中小企業では「少人数でいかに人材を育て定着させるか」が注目され、1on1の重要性が増しています。
しかし現実には、「やり方が分からない」「話すことがない」といった理由で、形だけの面談になっていることが少なくありません。
まずは、1on1の本来の意味をしっかりと理解することが、改善の第一歩です。
本来の目的(信頼関係・育成・マネジメントの質向上)
1on1は、部下の内面に耳を傾け、支援する場です。仕事では見えない考えや感情、将来の希望に触れることで、信頼関係が生まれます。
信頼が築かれると、本音が出やすくなり、早期の課題発見にもつながります。また、上司にとっても現場のリアルな情報を得られる貴重な機会となるのです。
さらに、1on1はマネジメントスキルを磨く実践の場でもあります。聴く力、対話力、フィードバック力など、普段意識しづらいスキルを育てる場になるのです。
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「1on1が意味ない」と感じる主な理由
上司が一方的に話す/フィードバックがない
「上司ばかり話す」「何を言っても反応がない」という不満はよく聞かれます。
本来は部下の話を“聴く”場なのに、上司が主導してしまうと、部下は受け身になり、1on1への期待を失います。フィードバックがなければ、「話しても意味がない」と感じて当然です。
これは上司が悪いというよりも、「どう聴くか」「どう返すか」のスキルが曖昧なまま始めてしまっているケースが大半です。
話すことがなく毎回同じ話題になる
「最近どう?」→「特に変わりません」——このやり取りで終わっていませんか?
話すテーマが決まっていなかったり、事前にアジェンダが共有されていないと、毎回の1on1が場当たり的になります。
本来は業務だけでなく、キャリアや価値観、悩みなどをじっくり話す場です。テーマを工夫しないと、せっかくの時間が雑談で終わってしまいます。
時間がない中で義務的に行っている
時間がない中で無理に1on1を入れていませんか?
上司が「忙しそう」「早く終わらせたい」という雰囲気だと、部下も話しづらくなります。「形だけ」「やらされてる感」では、むしろ信頼を損なうリスクすらあるのです。
短時間でも、目的を持った対話ができれば1on1は機能します。時間がないからこそ質を上げるという意識が必要です。
詰められる・評価の場と勘違いしている
1on1が「詰められる」「評価される」と感じられてしまうと、本音は出ません。
上司が成果の未達を指摘したり、評価に結びつく発言をすると、部下は警戒し、表面的な会話しかできなくなります。
1on1はあくまで「対話の場」であり、評価の時間ではありません。心理的安全性がないと、信頼関係は築けません。
「やめてほしい」と感じる心理的ストレスの正体
部下が1on1にストレスを感じるのは、「話す内容が分からない」「安心できない」からです。
目的が曖昧なまま進められ、準備もなく本音が話せない状態では、面談はプレッシャーでしかありません。
「なぜこの時間があるのか?」「安心して話せるのか?」という前提の共有がなければ、どれだけ形式を整えても、意味のある対話にはなりません。
1on1が意味のある時間になるための工夫
目的の共有と事前のアジェンダ設定
1on1の価値を高める第一歩は、目的と期待値を明確にすることです。
上司は「これはあなたの成長と働きやすさを支える時間」と伝えましょう。そのうえで、事前に話したいテーマを共有しておけば、当日もスムーズに深い対話ができます。
例:事前共有テンプレート
- 最近うまくいったこと/困っていること
- 今後チャレンジしたいこと
- チームや業務への提案・気づき
- 上司に相談したいこと
「話すことがない」問題を解消するテーマ例
以下のようなテーマをローテーションで取り入れると、内容の幅が広がります。
業務に関する話題
- 最近うまくいったことや苦労していること
- 改善したい仕事のやり方
- チーム内で気になっている課題や働き方
キャリアや成長に関する話題
- 今後チャレンジしたいことや身につけたいスキル
- 3ヶ月後、半年後、どんな状態になっていたいか
- 他の部署や仕事への興味・関心
働く環境・マインド面の話題
- 最近モチベーションが上がった/下がった瞬間
- 気になっている社内の雰囲気や人間関係
- 不安やストレスを感じていること
コーチング vs ティーチングのバランス
1on1では「問いかけて引き出す(コーチング)」と「教える(ティーチング)」の両方が必要です。
経験が浅い部下にはアドバイスも大切ですが、まずは「どう思う?」と問いかける姿勢を持ちましょう。
「教える」「引き出す」を使い分けることで、1on1は指示の場から“成長の場”へと変わります。
1on1の内容を記録し、振り返る仕組みを作る
せっかく1on1を実施しても、「何を話したか覚えていない」「次につながらない」という状態では、継続的な信頼構築や成長支援にはつながりません。
そこで重要なのが、1on1の記録と振り返りの仕組みを整えることです。
記録といっても、長文の議事録を作る必要はありません。会話のポイントや課題を記録することで、前回の対話とのつながりが生まれ、「その後どうなった?」という振り返りにつなげることが可能です。
また、記録を部下と共有できる形にしておくことで、認識のズレも減り、部下自身が自分の変化や成長を客観的に振り返る材料にもなります。
忙しい現場では、1回ごとの1on1に全力を注ぐだけで終わってしまいがちですが、「記録→共有→振り返り」というサイクルを回すことで、1on1の価値は何倍にもなります。
「詰められる場」にしない心理的安全性の作り方
本音が出る場にするには、「安心して話せる」と感じてもらう必要があります。
そのために大切なのは、「共感」と「非評価」の姿勢です。
- ミスや悩みを否定せず、まずは受け止める
- 上司自身も弱みや迷いを共有する
- 反論よりも「それはどう感じたの?」と問いかける
- こうした態度の積み重ねが、信頼関係を育てます。
心理的安全性についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
上司側の1on1スキルを高めるポイント
聴く力と共感力の育て方
「聴く」とは、相手の言葉の奥にある意図や感情をくみ取ることです。問い返しや要約を交えながら、ともに考える姿勢が求められます。
- 「それは大変だったね」と感情に寄り添う
- 「具体的には?」と掘り下げる
- 「つまりこういうことかな?」と確認する
共感力はテクニックではなく「相手に関心を持つ姿勢」から生まれます。
短時間・高頻度でこまめに行う工夫
1on1を月1回や四半期ごとに行うのは、決して悪いことではありませんが、効果的な育成や信頼関係構築には、もっと頻繁に、短時間で行う方が効果的です。
なぜなら、頻度とタイミングを増やすことで、部下の課題や悩みが小さなうちに解決できるからです。また、コミュニケーションが定期的に行われることで、部下は常に上司と「つながっている」という安心感を持つことができます。
例えば、週10〜15分の「ミニ1on1」を導入するだけでも、関係性や部下の変化の兆しに気づきやすくなります。
中長期的視点で人材育成に活用する
1on1は、目の前の業務に関する問題解決だけでなく、部下の成長を見越した中長期的な視点で活用することが大切です。
つまり、1on1を「ただの業務確認の場」として使うのではなく、部下のキャリア形成や長期的な成長を支援する場にすることが、上司としての役割をより強化します。
短期的には業務や成果にフォーカスしがちですが、中長期的な視点を持つことで、部下が「自分の成長のために1on1がある」と感じるようになります。以下のような点を意識して取り組んでみましょう。
- キャリアゴールの明確化
- 長期的な成長をサポートするフィードバック
- 挑戦的な目標の設定
このように、1on1は部下の「今」に焦点を当てるだけでなく、未来のビジョンやキャリアを一緒に作り上げる場として活用することが大切です。中長期的な視点を持つことで、1on1がより深い意味を持ち、部下の成長を持続的に支えられます。
エンパワーパス式1on1改善メソッドとは?
WCMシートで心理的安全性を確保し、1on1に頼らないマネジメントを実現
オレコンでは、1on1を効果的に実施するために、WCMシート(Will・Can・Mustシート)を活用しています。このシートは、部下が「やりたいこと(Will)」「できること(Can)」「期待されていること(Must)」を可視化するツールです。
WCMシートを活用することで、部下と上司の間にある「ズレ」や「不安」を事前に明確にし、1on1の場に依存せずに日常的に信頼関係を築けるようになります。具体的には、WCMシートにより次のような効果が得られます。
- やりたいことと業務を一致させる
- 部下と上司の認識のズレを減らす
- 心理的安全性の向上
このように、WCMシートを導入することで、1on1をただの報告やフィードバックの場ではなく、部下の成長を支援し、信頼関係を深める重要なツールに変えることができます。
さらに詳しいWCMシートのメリットを知りたい方はこちらもご覧ください。
「1on1の時間」より「関係性の土台」を重視した育成アプローチ
1on1の価値を最大化するために重要なのは、1回1回のセッションだけに頼らず、日常的な関わりを大切にすることです。
エンパワーパスでは、1on1を「補助的なツール」と位置づけ、関係性の土台作りを最優先にしています。
1on1の時間だけで全てを解決しようとすると、逆に部下にプレッシャーをかけてしまい、意味のある対話にはなりません。
大切なのは、日常的なコミュニケーションの中で信頼関係を構築し、1on1はその成果を振り返る場として活用することです。
このように、「1on1だけで解決しようとしない」ことが逆に、意味のある1on1を生む土壌になります。
WCMシートで実現する“やりたい”と“仕事”の接続
WCMシートを活用することで、部下のWill(やりたい)と業務を明確に結びつけることができます。これにより、部下は自分の仕事がただの作業ではなく、自分の成長ややりがいに直結していることを実感できます。
たとえば、「自分のスキルやキャリアにどうつながるか?」といった視点で1on1の内容を具体的に掘り下げることで、対話の質が高まるのです。
1on1の中で部下が自分のやりたいことを業務にどのように反映させるかを話すことで、部下のモチベーションは大きく向上します。
オレコン式の人材育成についてより詳しく知りたい方はぜひこちらの資料もご覧ください。
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まとめ|「意味ない1on1」から「価値ある1on1」へ変えるには
1on1を意味がないと感じる原因はさまざまですが、共通するのは「目的が不明確」だったり、「やりとりが表面的」だったりする点です。
しかし、1on1をただの業務確認や評価の場として捉えるのではなく、部下の成長や信頼関係を深めるための貴重な時間として活用する方法があります。
ここで紹介した改善ポイントを意識的に取り入れることで、次のような変化が期待できます。
- 1on1が本音を話す場になり、信頼関係が強化される
- 業務だけでなく、キャリアやモチベーションにも触れた対話ができる
- 評価や指導ではなく、ともに成長する場として1on1を活用できる
最も重要なのは、1on1の本来の目的を理解し、それを意識的に実践することです。上司としてのスキルを高めると同時に、部下の成長を支援し、組織全体の信頼関係を築くことができます。
よくある失敗→改善ポイントを簡単におさらい
1on1の失敗例としては、以下のようなものがよくあります。
- 業務確認だけで終わってしまう
→ 改善策: 目標やキャリアについても触れる時間を確保 - フィードバックが一方的で部下が反発する
→ 改善策: コーチングや共感を意識し、部下の視点に立った対話 - 部下が毎回同じことを話して終わる
→ 改善策: アジェンダを事前に設定し、目的意識を明確にする
次の1on1からできる小さな一歩
次回の1on1からは、以下の小さなステップを踏んでみましょう。
- アジェンダを事前に共有し、部下に話したいテーマを出してもらう
- フィードバックの際、共感の姿勢を大切にし、具体的な質問を投げかける
- 「次回の1on1で話すべき目標や成長について一緒に考えよう」といった未来志向の会話を取り入れる
これらを取り入れることで、少しずつ1on1の質が向上し、部下との信頼関係が深まります。
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参考:
HR One人事:1on1は意味ない?無駄や苦痛に感じる理由、課題とデメリット、克服方法を解説
HRpro:5割超が“上司との1on1”でモチベーションダウン。部下から「意味ない」、「苦痛」と思われない面談のやり方は?